中盤とはチームにとって最も重要な場所である。

試合開始早々、ピッチコンディションに悩まされながらも、我々は全員でリズムをつくり上げていた。
相手は我々にボールを持たせ、ボールを奪った瞬間、カウンター攻撃でゴールを狙うプランが見えた。

我々はボールを支配し、複数で相手のゴールへ向かう。しかし相手のプレッシャーもあり、加えてピッチの状態も難しく、ミスが出る。
前半12分、相手のクロスからヘディングシュートを決められてしまう。
その後も何度かカウンターを受けるが、ミッドフィルダーとディフェンスの頑張りで、まずは防ぐことができた。全てにおいて自分たちのミスから相手勢いをつけてしまっている状況だった。しかし、1人の男がそのストレスを消した。
熊林のFKで同点。
大きく曲がったボールは相手ディフェンスとゴールキーパーの間に向かい、相手キーパーは正確な判断が出来ず、ボールはそのままゴールへと吸い込まれていった。

この日の天候は暑く、カウンターを受けてチーム全体の運動量が消耗している状況の中で生まれた熊林のゴールはチームにとってかなり大きかった。3分後、相手が浮き足になっている状況で生まれた半田の逆転ゴール。ゲームはほぼ我々の時間だと思いきや、70分に同点とされる。

ただ、後半もボールを保持し、中盤の選手がバランスよく動き、試合の状況を読むことが出来ていたのはフォワードとしてスタメン出場していた菅原の存在が非常に大きい。試合開始より前線からハードワークし、守備意識が本当に素晴らしかった。中盤や最終ラインの選手たち。何よりチーム全体のメンタルを安定させていた。暑さのある状況やチームが安定していない状況で全体がアンバランスなときに、前線からのしっかりとした判断のもとプレーするとチームは安定する。

90+1分、ブラウブリッツに関わる全ての方々が歓喜した菅原のヘディングシュート。試合終了間際の勝ち越しゴールで勝ち点3を獲得することが出来た。

組織性を持って戦う。これこそ「フットボール」だ。

ゲーム中のベンチワークも素晴らしかった。バックアップの選手たちもひとつになり、ピッチで戦っている選手たちにモチベーションを上げるような声をかけ続け、鼓舞し続けた。会場にはアウェイにも関わらず、秋田からもたくさんのサポーターやファンの皆さんが応援に来てくれていた。

ブラウブリッツ秋田というクラブは本当に幸せだと思う。

話は変わるが、ブラジルのサントスに所属しているネイマールが1100万ユーロを提示したレアルマドリーを選ばず、740万ユーロを提示したバルセロナを選んだ。それをみなさんはどう捉えますか?

私は、哲学を深く追求し、「トータルフットボール」を考えるバルセロナというクラブに魅力があったのだと思う。

秋田県の秋田県にしかない「フットボール」をみなさんで作り上げましょう。

「誇り」を持って戦える。

それは間違いありません。

新里 裕之 ゼネラルマネージャー

2003年、ラモス瑠偉氏らと共にFC琉球を創設し、初代監督(選手兼任)に就任。翌年現役引退。
2006年、FC琉球 コーチに就任、2009年にはFC琉球 監督に。元日本代表監督のフィリップ・トルシエ氏(現・FC琉球スーパーバイザー)とともにチームを指導した。
2012年にブラウブッリッツ秋田 ヘッドコーチとなり、横山雄次監督を支えた。
2013年よりブラウブリッツ秋田 ゼネラルマネージャに就任。

1980年8月29日生まれ、沖縄県出身。